「なくすのをこわがって、なにも持たずにいるなんてさ。」

どうせ自分には無理、自分はこういう性質だから仕方ない。
自分で自分に、そういう言い訳をし続けて、諦めてしまっていたんだと思う。

何せ、ずっと失敗を積み重ねてきた。自分を信じてまた失敗したらどうしよう、
失望されるのが怖いから、出来るかもわからないことを出来るなんて言いたくない、
まして嘘ついたみたいに思わせてしまって傷付けてしまうかもしれないと、怖かった。
自分のことしか見えていなかった。

あの表情もあの言葉も取りこぼして、そうして、取り返しがつかない間違えをしてしまった。
はっきりとした拒絶が答えだった。

もう謝ることもできない。謝りたいというのも自分のエゴだ。
関わらないことが、自分に出来る唯一のことだ。

変わりたいなあ。
変わりたいなら、変わると決めるしかない。


“何度でも俺を裏切り、試すといい。
どうされたって、俺が麻子を好きだということは変わらないんだから。”

春太みたいに言えたらよかった。
春太が全力で麻子を愛し、微塵も二人の愛を疑わず、お互いに唯一無二の存在だと確信するように。
あるがままを全部受け止めて、自分こそが、麻子を幸せに出来る運命の相手なのだと自負するように。

…違うか、そうじゃないんだよなきっと。
春太にはなれない自分を受け入れるべきだったんだろう。何かしてあげたいなんて思い上がりだった。
無力な自分を受け入れて、自分を諦めて、ただ黙ってそばにいればよかった。
ただそれだけのことを、きっと望んでくれていたのに。何もかも独りよがりだった。

“馬鹿だなあ、麻子。なくすのをこわがって、なにも持たずにいるなんてさ。
臆病な子どもみたいなとこがあるんだから。ま、もちろんそこもかわいいんだけど。”

あなたが、大切な人とこの世界でくつろげますように。
世界が、あなたを大切に思う人たちが、ずっと差し出してくれているたくさんの美しいものを、
当然に受け取ることができますように。

“そう、何度でも。麻子が生きて幸せでいるかぎり、何度でもあたたかい春はめぐってくるんだよ。”

傷付いたままで、不安で寂しくて、それでも理解したいと言ってくれた。
きっと、理解されることを誰よりも望んでいたはずなのに。
どれだけ孤独だっただろう。涙が出る。

ごめんね。きっと綺麗事だと言われてしまうけど、幸せを願ってやまない。

文中の引用は、三浦しをん/春太の毎日

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